迷宮のクロスワード【事件編】

クロスワードパズルというものをやったことがあるだろうか。

おそらく、ほとんどの人がやったことがあるだろう。やったことのない人のために説明すると、四角く空いたマスの中にある特定のワードを入れていき、パズルを完成させるという簡単なゲームだ。タテのカギとヨコのカギがあり、それぞれが交差するところには同じひらがなないしカタカナが入る。これによって、タテかヨコかどちらかが分かれば、別の言葉のヒントとなるのだ……

理解できただろうか?クロスワードパズルの説明ってなかなか難しい。

 

つい先日、親戚の集まりがあり、そこに来ていた子が一心不乱にクロスワードパズルをやっていた。その子のお母さんも夢中になって解いている。

僕も暇だったので挑戦することにしたのだが、これがなかなか面白い。けっこう頭を使うのだ。持っている知識を総動員し、マスを埋めていく作業が、脳味噌の片隅まで掃き掃除をしているようで快感である。

すると、親戚の親子が「ここがどうしてもわからん!」と、悩み始めた。途中までパズルを解いていたようだが、どう考えても分からない部分があるようだった。見るとこんな感じにマスが空いていた。

 

                  じ

                  □ま

              しんどう

       でい□ □

              □

              □

 

……このマスを再現するのにかなり時間がかかった。心が折れそうになったが、ここまで書いたので最後まで書くとする。

とにかく、タテの「じ□ん□」と「し□□□」、ヨコの「□ま」と「でい□□」という単語が埋まらず悩んでいるようだった。

そしてそれぞれにはヒントとなるカギが書いてあるのだが、

 

「じ□ん□」

→シューティングやアドベンチャーなど

「し□□□」

→超えてナンボ

「□ま」

→デック

「でい□□□」

→いろんな意味での交渉

 

と、あった。

普通、ヒントなので分かりやすい単語が入っているはずなのだが、「デック」だけは全く意味が分からない。なんだよデックって。分かる言葉を書いてくれよ。

この埋まらないマスのために、僕は必死で頭を使った。脳味噌の片隅の片隅まで探したがまったく分からなかった。脳味噌のシワの奥までも丹念に探した。が、見つからなかった。

まずタテの「じ□ん□」、カギには「シューティングやアドベンチャーなど」と書いてあった。ということはゲーム関係だろうか?と散々頭を悩ませ出てきたのは「じまんじ」だった。ボードゲームの映画の名前である。ズルした男の子が猿になるやつ。しかしよく考えたらそれは「ジュマンジ」だった。なので保留にした。

次にヨコの「□ま」。お前だよお前。「デック」のお前だよ。この「ま」は「蛍の光〜◯◯の月〜」とあったので下の言葉とも合わせて「まど」が正解なので正しい。だが、そもそも「デック」の意味が分からない。デック……デックの坊(木偶の坊)?ダメだ、こんなことしか思い浮かばない。1番の木偶の坊はこんな事も分からないお前だよと言わんばかりである。とりあえずこれも保留。

次にタテの「し□□□」、「超えてナンボ」って何だ?「し」から始まる超えてナンボな四文字……「師匠(ししょう)」か?ふとキル・ビル2のパイメイ先生のような師匠の姿が頭に思い浮かぶ。

「ワシを超えてみせよ…」

誰なんだ一体。クロスワードパズルの師匠か。

とりあえず、小さな文字で「ししょう」と書いた。

最後に、ヨコの「でい□□」、「いろんな意味での交渉」とあるが、先ほどの「ししょう」が正しければ「でいし□」という単語になるはずだ。何だ「でいし□」って。でいし……出、石……?「出石」?いや、出石と書くと「いずし」だ。水曜どうでしょうで皿そばを食べていたところだ。この地に「いろんな意味での交渉」という意味はもちろんない。

 

「ぼかぁねぇ〜こんなパズルをねぇ別にやりたいわけじゃないんだよぉ」

 

と、頭の中で小さな大泉洋がボヤいている。頭を使いすぎて全く関係のないことを考え始めてしまった。今や頭の中でジュマンジの猿になった子と、パイメイ先生と、大泉洋、そして謎の「デック」が侃侃諤諤とああでもないこうでもないと議論している。

 

……さて、ここまで書いてかなり長くなってしまったので、続きは次回に持ち越しである。

ここまでで、勘の良い人は気付いていると思うが、実はある重大な「見落とし」をしているのだ。その「見落とし」とは…?そしてパズルは全て埋まるのか…?

続きは次回の「解決編」で。

またお会いしましょう。

小島えもでした……(古畑任三郎風に)